生産拠点から温室効果ガスを削減
-工場から実現するサステナビリティ-
バイエル クロップサイエンス株式会社
防府工場 製造技術革新課 製造 保全
嶋谷 卓也
農薬の生産拠点、防府工場
防府工場は、周防灘に面し、近隣には日本三大神に数えられる防府天満宮、あじさいが美しい阿弥陀寺、防府平野や瀬戸内海に浮かぶ島々を一望できる大平山山頂公園などの観光名所があり、豊かな歴史と自然が楽しめる土地に位置しています。1968年に農薬の生産拠点として設立し、50年以上にわたり稼働しています。防府工場では、少人数で効率的かつ正確に仕事ができるように自動化が進められています。また、海外からの従業員も複数名いるため、スムーズにコミュニケーションをとろうと自発的に英語学習に取り組む従業員が増えており、DE&I(多様性・公平性・包括性)の観点からも良い方向に変わってきていると感じます。
防府工場における温室効果ガス排出削減の取り組み
製品が生み出される工場は、安定的なビジネスを継続していくうえで大変重要な拠点です。一方、工場の稼働においては一定の環境負荷がかかるため、特に持続可能な開発目標(SDGs)の目標13「気候変動に具体的な対策を」に貢献すべく、防府工場では2030年までに2019年比で温室効果ガスの排出量を42%削減することを目指しています。温室効果ガス削減は日本のみならず、バイエルが世界各国の拠点と協働して達成を目指す共通目標で、防府工場の取り組みもこのグローバル指針に沿って実施しています。例えば、不耕起栽培などの土壌管理やデジタルツールを活用した精密散布の実現、カバークロップなど大気中の炭素を回収するソリューションの提供など、生産者との緊密な協力を通じた取り組みでは、全世界で2030年までに排出量30%削減を目指しています。
防府工場ではさまざまな剤型の農薬を製造していますが、特に粒剤の乾燥工程で多くのエネルギーを消費しているため、受電設備のエネルギー効率改善による消費電力量の削減に努めています。また、リソースやコスト、安定性などさまざまな観点から工場のプロジェクトチームと本社の関係部署が議論や検討を重ね、クリーンエネルギーへの切り替えとして「オンサイトPPA」※の導入を決定しました。工場の立地条件や時間帯・季節毎の電力需要などさまざまなファクターを考慮しながら準備を進め、工場内の一部敷地(6,600 m2)にソーラーパネルを設置。2024年4月より受電しています。オンサイトPPAの導入により、年間使用量の約20%をまかない、287トンのCO2排出削減につながります。
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- オンサイトPPA:発電事業者が需要家(企業、家庭、公共施設など)の敷地内に発電設備を設置して、電気を提供する仕組み。
イノベーションを生み出すカルチャーとオーナーシップ
防府工場において、日々の業務だけでなく、サステナビリティを推進するのに大きな後押しとなっていることがあります。それは、個々の社員が役職や役割を超え、同じ目的のためにアイデアや意見を活発に出し合い、オーナーシップをもってチャレンジする環境があることです。私も、工場長の部屋のドアをノックしてアドバイスを求めたり、意見交換したりすることがよくあります。物事を前に進めるときには多くの課題にぶつかりますが、それでも現状の目標値を限界とせず、より高い目標を見据え、私たちの生産拠点から環境負荷削減のための試行錯誤を続けていくことが、ひいてはバイエル全体としてのイノベーションの追求にもつながると考えています。
環境への影響を少なくしながら、より安定的な食糧供給につながるよう、私たち農薬の生産現場も日々、業務や生産工程のあり方を見直しています。日本の農業の持続可能性に向けたクロップサイエンス部門が掲げるサステナビリティの3本柱「最適な農薬と使用法の開発」「デジタル農業」「人と地球の共栄」に沿って、温室効果ガスの削減により防府工場としても貢献できるよう、引き続き取り組んでいきます。