専門家のレビュー


プランテクト®病害予測機能のうち5つの病害は
イノベーション創出強化研究推進事業(以下イノベ事業)
「施設園芸の主要病害発生予測 AI による総合的病害予測・ 防除支援ソフトウェア開発」
プロジェクトで開発されました。
研究コンソーシアムの研究統括者を務められた秋田県立大学 古屋名誉教授、
岩手県農業研究センター 岩舘上席専門研究員、香川県農業試験場 西村主任研究員、広島県立総合技術研究所 清水主任研究員にお話を伺いました。

※個人の感想です。取材当時の情報です。

秋田県立大学 生物資源科学部
古屋 廣光 名誉教授

産官学連携のプロジェクトで研究開発・実証

イノベ事業とはどのような事業でしょうか。

生研支援センターによる事業で、農林水産関連産業分野において競争的資金によって研究を支援する事業です。課題を公募して研究を支援し、社会実装に結びつけるということを特に目指している事業と理解しています。

研究はどのように進められたのですか。

発病予測ソフト・システムを作るときに、病気の発生に関する知見が必要です。また出来上がったシステムについての実証試験も必要です。それを6つの県の農業試験場、3つの大学の研究室で分担して実施しました。

疫学的な基礎実験を病害予測開発に活用

疫学的な基礎実験の結果を病害予測にどのように活用しているのでしょうか。

病気の発生は3つの要因、すなわちその病原体、病気にかかりやすい性質を持った作物・植物、それからもう一つ大事なのが環境要因ということになります。特にカビによる空気伝染性の病気の場合には、感染が起きるときにある程度あるいはかなり限定された環境条件というのを要求するものがあり、感染したかどうかのリスクを推定することは可能です。

本プロジェクトでは、農業試験場あるいは大学の研究室において病気が出やすい環境条件を明らかにするための検討をしました。そのような研究はこれまでもずいぶんなされてきましたので研究蓄積としては多いのですが、必ずしも病気の発生を予測する、感染したかどうかを推定するという目的だけで調べてきたわけではないため、足りないところもありそうでした。そのため、発病を予測するという目的のために必要な知見をあらためて確認するとともに、足りないところは調べ直すことにしました。このようなデータが感染リスクを検出・推定するためのAIモデルを作るときに使われています。

慣行防除ではカレンダーに沿って散布、AIなら発生実態に即した防除が可能

プランテクト®の病害予測システムを利用することでどのようなことが期待できるでしょうか。

慣行防除では過去の病気の発生を踏まえ薬剤散布をしますので、ある意味カレンダーに沿って散布をしていくという技術になっていることが多いようです。それに対して発病予測が出来るときにはその年の気象条件や病気の発生実態により即した防除が可能になるということが期待できます。AIで発病を予測して、病気の発生リスクが高まったときに薬剤散布をするということになりますので、より発生実態に即した防除・薬剤散布が可能になるというのが期待できるのではないかと思います。

岩手県農業研究センター 生産環境研究部 病理昆虫研究室
岩舘 康哉上席専門研究員

トマトうどんこ病に関する実証試験をご担当

プランテクト®の予測精度はかなり高いと感じました

プランテクト®の病害予測機能の精度はいかがでしょうか

トマトうどんこ病について、プランテクト®の予測精度はかなり高いと感じました。もちろんプランテクト®は防除の意思決定を人間に代わってやるものではないので、最終的には人間がこのリスクを評価する必要がありますが、十分実用レベルであると感じました。

最適な防除タイミングや防除回数が見えてくる

トマトうどんこ病について、(岩手県では)これまでほとんどの方が防除対象としてこなかったと思います。そのため、プランテクト®で出たリスク表示と、ご自身のハウスでのうどんこ病の発生状況を栽培終了後に確認することによって、最適な防除タイミングや防除回数が見えてくるのではないでしょうか。

東北などの積雪地帯では冬にハウスを剥がすという場合がたくさんあります。そのようなハウスでは電源が確保できないことが多くあります。そのため、環境制御自体ができません。プランテクト®の感染リスク表示だけではなく、環境モニタリングシステムとしても有効だと思います。

岩手県ではこのプランテクト®を用いた防除支援システムについて、「技術指導の参考とする成果」として取りまとめました。

香川県農業試験場 病虫・環境研究課
西村 文宏主任研究員

イチゴうどんこ病に関する実証試験をご担当

ハウスの実情に応じた防除を提案できるシステム

プランテクト®の病害予測はどのように活用できるでしょうか

多くの方が防除暦をもとに薬剤防除をしています。防除暦は長年の生産の積み重ねであり、また産地の財産ともいうべきものになります。ところが、病害が出にくいハウスでは過剰防除となり、一方で病害が出やすいハウスでは防除不足となっております。こうしたハウスに対して、ハウスの実情に応じた防除を提案できるシステムとしてプランテクト®が活用できるのではないかと考えております。

新規就農者や複数のハウスをお持ちの方、ハウスが遠い方にうってつけ。

どのような利用方法が有効でしょうか

プランテクト®はデータに基づいた感染リスク予測が最大の特徴と考えています。ハウスに応じて出やすい病気や出にくい病気などがあることから、新規就農者の方にはうってつけではないでしょうか?また、モニタリング機能があることから、ハウスを複数お持ちの方やお住まいとハウスが遠い方などにおいては大変便利ではないかと考えております。

生産者部会の中において、栽培講習や篤農家の方の技術を見える化して、部会全体での技術向上、または収量向上に活用できるのではないかと考えます。

広島県立総合技術研究所 農業技術センター 生産環境研究部
清水 佐知子主任研究員

トマトすすかび病に関する実証試験をご担当

すすかび病は発病を見てから農薬を散布しても抑えることができない。
プランテクト®を使うことで効率的に防除が可能。

予測機能をどのように活用できるでしょうか

すすかび病の特徴として、潜伏期間が10から20日と非常に長いということがあります。発病を見てから農薬を散布しますと、なかなか1回の防除ではうまく抑えることができなくて、結果的に農薬の散布回数が多くなってしまいます。そのため感染のタイミングを教えてくれるプランテクト®を使うことで効率的に防除が可能になるというふうに考えております。

エコファーマーの効率的な防除や育苗のモニタリングに使える。

プランテクト®はどのような利用方法が有効でしょうか

広島県では、エコファーマーといって減農薬栽培に取り組んでいる産地があります。そのようなところでは、効率的に防除を行うことで、農薬を適切に使うといったことが可能かと思います。

病気の予測だけでなく温度・湿度が手元でわかるということがありますので、例えばトマトの育苗をしているハウスの温度が今どうかなのかを、お昼のご飯を食べた後にハウス温度を見て、高温ならすぐに開けに行けるといったかたちで使うことも可能かと思います。