農作物の保護
農薬による環境への影響を30%削減
私たちは、生産者との緊密な協力を通じて、
2030年までに農薬による環境負荷を30%削減することを目標としています。
過去数十年間に、農薬が環境に与える影響は減少し、収量は着実に増加しています。私たちは、生産者が「より良い収穫を、より少ない資源で」生産できるよう支援しています。私たちには、革新的な資材の投入、新しい農法、より正確な散布によりこの影響を減らし続ける機会と責任があります。
バイエルは、イノベーションがもたらすインパクトを目の当たりにしてきました。私たちは市場におけるリーダーであるにもかかわらず、バイエルの農薬による環境への影響はすでに極めて低いレベルです。私たちはそれをさらに減らしていきます。
農業活動は常に環境に影響を与えています。農家が使用するそれぞれのツールには利点がありますが、しばしば欠点も見受けられ、このことは一般的に農薬にも当てはまります。農家は、より少ない土地と資源で世界の農業需要の増大に対応し続けることを可能にする農薬などの手段の必要性と、そうした手段の使用を増やすことでもたらされる潜在的なトレードオフの両立を図る必要があります。
農薬を市場に出すためには、有効性が明確に証明されており、かつ人間の健康への影響がなく、環境への影響も最小限で許容範囲であることを保証することが前提条件となります。農薬は、当局によって厳しく規制されています。バイエルは一貫して、生産者にとって同等またはそれ以上の利益をもたらし、環境への影響がより少ない農薬を開発、提供することを目指しています。
このため、バイエルは農薬環境負荷低減(CP EIR)の手法を採用し、農薬の環境負荷を低減することをコミットしています。具体的には、2030年までに全世界における処理面積1ヘクタールあたりのバイエルの農薬の農薬環境負荷を、2014~2018年の平均ベースラインに対して30%削減する予定です。
データ主導型アプローチによる農薬による環境負荷低減
農業には万能のソリューションはなく、ある生産者にとってうまくいっても、別の生産者ではうまくいくとは限りません。私たちは、最も大きな効果が期待できる国や作物について生産者とパートナーシップを結び、総合的な作物管理アプローチを最適化します。イノベーションのパイプラインによって拡張を続けるバイエルの一連のツールにより、私たちは生産者と提携し、それぞれの圃場に合わせた農薬ソリューションを選択し、付加価値を高めながら環境に対する影響を低減していきます。このコミットメントを達成するために、私たちは以下のことを行っています。
これらのツールにより、1ヘクタールあたりに必要な農薬の量を最適化します。
- 精密散布:データ主導型ツールにより、適切な量の農薬が適切な場所と時期に施用することを確実にします。
- 種子処理:種子に施用する農薬により、化学薬品の使用量を大幅に削減し、野生生物や環境への暴露の可能性を低減することができます。
- 種子・遺伝形質:害虫や病気に対抗できるように品種改良された作物は、化学農薬の使用の必要性を確実に減少させます。
以下のような、環境への影響を大幅に低減できる新しい優れた農薬ソリューションの発見
- 新しい化学物質:潜在的な環境リスクと暴露を低減しながら同レベルの有効性をもたらす、より優れた環境プロファイルを持った新しい作用機序。現在では、パイプラインの初期段階で新薬の環境影響をスクリーニングし、この評価をパイプラインの進捗の判断に含めます。
- 生物農薬:微生物に由来する、または生物の自然な防御機構に基づく数多くの製品を提供し、総合的病害虫・雑草管理統合管理手法を補完・強化し、害虫耐性を低減します。
生産者のサステナビリティを向上させ、環境への影響を低減できるベストプラクティスを推奨
- スチュワードシップ手法:緩衝帯、耕起方法、カバークロップ、ドリフトおよび流出低減対策など、農薬を本来の場所である圃場に留めることを目的とした優れた農業慣行です。「バイエル・フォワード・ファーミング(Bayer Forward Farming)」のネットワークで、その実践をご覧いただけます。
- 総合的害虫管理:各シーズン、または数年のタイムスケールでの害虫管理に対する全体的かつ体系的なアプローチです。
影響の測定
農薬による環境への影響を低減するというコミットメントは、シンプルかつ野心的に、すべての人に向けて実行しているものです。その測定も同様に野心的なものですが、単純ではありません。しかし、これによって、私たちは約束を守り、前進していることを知ることができるのです。
最先端の農薬環境影響評価(CP EIR)手法を用いることで、私たちは確固たる科学に基づくツールを追加し、農地におけるさまざまな農薬の相対的な環境影響を比較するのに役立てます。さらに、生産者の利益を維持しながら、より影響の少ない製品を選択し開発することが可能になります。
私たちは最先端の外部機関2か所で開発された数理モデルを使用しており、
その使用方法についても公表しています。
農業界では初めて、外部で開発された数理モデルを使用して、私たちはバイエルの農薬ポートフォリオの環境影響の可能性を評価しています。デンマーク工科大学(DTU)が主導するコンソーシアムによって開発され、UNEP/SETACライフサイクルイニシアチブによって承認されたPestLCI 2.0とUSEtox®)は、異なる国や異なる作物における農薬の環境影響を評価するために使用できる最も進んだライフサイクル評価モデルです。これらのモデルを同時に使用することで、私たちの製品が与える影響について明確な考えを持つことができます。その方法は以下の通りです。
PestLCIは、デンマーク工科大学(DTU)が2006年から他の研究機関や組織と協力して開発・確立してきたものです。Pes-tLCIは、農薬を圃場に散布した際に周辺環境に排出される有効成分の量を、すべての関連プロセスを考慮した上で推定しています。
USEtox®は、UNEP-SETACの支援のもと、2008年からさまざまな大学や研究機関と協力して開発されています。USEtox®は、周辺環境中の濃度と農薬が及ぼす水域生態系に与える影響を判断します。また、USEtox®は、製品のライフサイクルや環境フットプリントの分析モデルとして欧州委員会からも推奨されています。
影響評価法としての科学の発展に伴い、私たちはDTUやこの分野の他の専門家と協力して、現在のモデルの機能を拡張していきます。現在、私たちは水域生態系への影響に焦点を当てていますが、将来的には土壌やポリネーターへの影響評価モデルにも拡張する予定です。また、これらのモデルとその基礎となる手法は一般に公開されているため、科学者のコミュニティに私たちの進捗をチェックしてもらい、私たちのコミットメントの達成状況を検証してもらうよう呼びかけています。
サステナビリティ目標の範囲
第三者である市場データ提供者によって報告されているように、全世界におけるバイエルの農薬の使用状況が、農薬による環境への影響を低減するという私たちのコミットメントの範囲に含まれます。バイエルのコミットメントのベースラインは、2014年から2018年の間に世界中の圃場で使用されたすべてのバイエルの農薬とそれぞれの環境影響の平均値で構築されています。平均値をベースラインとすることで、季節性や気候条件への依存など、農業の特殊性を考慮しています。ベースライン、パフォーマンストラッキング、CP EIRの算出の透明性と信頼性を確保するため、農薬の使用データや物質特性データなど必要なデータはすべて第三者のデータを使用しています。
私たちは、独立した第三者に検証を依頼しています。
信頼できるサイエンスはどれも専門家による審査と検証を受けます。農薬の環境影響を減らすための取り組みも同様です。実際、これは私たち全員にとって非常に重要な問題であり、誰でも進捗状況を測定することが可能である必要があります。バイエルは、世界中の農家が農薬による環境への影響を軽減できるよう、常に努力を続けています。その内容ははこちらです。
- 私たちは、2023年のバイエル・サステナビリティ・レポートで、私たちのコミットメントの追跡調査を開始する予定です。このレポートとそこで報告されるすべてのデータは監査されます。
- デンマーク工科大学が独自に環境影響を評価します。
- 外部の専門家パネルがすべての結果と進捗状況をレビューします。
- 第三者がこれら一般公開されたモデルを用いて、独自に検証を行うことを歓迎します。
- 私たちは2023年版の『バイエル・サステナビリティ・レポート』で、私たちのコミットメントの追跡調査を開始する予定です。このレポートと報告されるすべてのデータは監査を受けます。
持続可能な農業とは、農家と環境への敬意との間の完璧なバランスのことです。言い換えれば、環境を大切にすることで、私たち農家は作物から十分な収量を得て、農場を収益化することができるのです。
パトリシオ・バルデンブロ (スペイン、ハシエンダ・ラス・カルデナス農場)