農家さんは農薬を使用する際、容器の開封から散布器具の洗浄までの各段階で農薬に暴露される可能性があります。使用時の暴露の経路として、手を含む全身に付着した農薬が皮膚から体内に吸収される経皮暴露、呼吸器から体内に吸収される吸入暴露が知られています。
おもに容器の開封から薬液の希釈までの調製時と希釈した薬液の散布時に暴露のリスクが高まるため、この2段階の作業において適切な防護装備を着用することが大切です。
農薬を調製する際のおもな暴露経路は手と呼吸器です。剤型によっても異なりますが、調製時における手の暴露量は呼吸器の暴露量に比べて大きく、その差が比較的少ない固体製剤でも150倍以上と報告されています。
散布時は手を含む全身と呼吸器が主な暴露経路です。散布時の暴露量は、散布の方向や作物の種類によって異なりますが、ここでも手を含む全身の暴露に比べて呼吸器の暴露は少なく、液状製剤を散布する場合、全身の暴露量は呼吸器の暴露量の150倍以上と報告されています(https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_touroku/attach/pdf/index-28.pdf)。なお、呼吸器の暴露量は手や全身の暴露量に比べ少ないですが、呼吸器経路の暴露では農薬が直接体内に吸収されることが知られています。
ここでは、農薬をより安全に使用するための防護装備を紹介します。
標準的な作業衣(標準服)と全身の防護装備
農薬を散布すると、散布液の一部が直接、体に付着したり落下することがあります。また、散布した作物との接触により散布液に触れてしまうことがあります。農薬の安全性によっては全身の経皮暴露を減らすため、不浸透性防除衣を着用し、農薬の皮膚への到達を減少させる必要があります。
標準的な作業衣(標準服)
バイエル クロップサイエンスは農薬を使用する際に、長そで・長ズボンを着用することは、農薬そのものの安全性に関わらず、可能な限り不要な暴露を低減するために必要なことと考えています。
作業者安全評価法が新しくなり、再評価される農薬や新しい農薬は新たに導入された作業者安全評価法により防護装備が定められますが、農薬の使用法によっては、長そで・長ズボンの作業衣が必要と判断されないことがあります。
バイエル クロップサイエンスは農薬の安全性に関わらず、作業時の暴露を減らす観点から長そで・長ズボンの着用は必要なことと考えており、これまで注意事項として明記していなった農薬にもこれらの着用を求める内容に改める予定です。作業者の安全は私たちの最優先事項の1つです。
全身の防護装備
全身の暴露を低減させる防護装備には、不浸透性防除衣や保護面(フェイスシールド)などがあります。
水を吸収する作業衣は薬液の皮膚への到達を完全には防ぐことはできませんが、不浸透性防除衣を着用することで減少させることができます。
また、保護面(フェイスシールド)の着用により、頭部への農薬の落下を減少させることができます。
農薬の安全性によっては、不浸透性防除衣や保護面の着用が必要となる場合があり、着用が必要な場合は注意事項に明記されます。
農薬を安全にご使用いただくため、農薬の安全性と使用法を考慮して定められた適切な防護装備を着用しましょう。わずかな準備で安全性が格段に高まります。
手、呼吸器及び眼の防護装備
農家さんは農薬を使用する際、容器を開封するときから散布器具を洗浄するまでの各段階で、農薬に暴露される可能性があります。バイエル クロップサイエンスは、農家さんの農薬の暴露量を低減させることは農薬そのものの安全性に関係なく重要と考えています。
手の防護装備
不浸透性手袋を着用することで調製時や散布時の暴露を低減させることが可能です。
農薬の安全性によっては、不浸透性手袋の着用が必要となりますが、そのような場合は注意事項に明記されます。不浸透性でない軍手などの布製手袋や革製手袋は農薬の暴露を減少させることはありませんので、農薬使用時の着用はしないでください。
呼吸器の防護装備
マスクを着用することで調製時や散布時の暴露を低減させることが可能です。
揮発させて使用する一部の農薬を除き、調製時や散布時の吸入暴露量は経皮暴露量に比べて少ないものの、吸入暴露された農薬は直接体内に吸収されることから、農薬の安全性によってはマスクの着用が必要となります。その場合、着用が必要なマスクの種類も注意事項に明記されます。
眼の防護装備
農薬の刺激性によって保護眼鏡の着⽤が必要となりますが、そのような場合注意事項に明記されます。