ムギ類の雑草防除


1.ムギほ場で問題となる雑草

ムギ類の雑草防除

日本国内のムギ類の大きな産地である「北海道(春播・秋播)」「関東」「九州」の3地域で問題となっている草種をおもに紹介しています。
地域によって,ムギ類の栽培品種や期間が異なるように,問題となる雑草にも違いがあります。また,同じ草種でも発生する時期が異なるといったような違いはありますが,問題になる雑草の多くは冬生一年草です。

冬生一年草は,ムギ類と同じ時期に発芽・出芽して,ムギ類より早く,開花・結実する生活サイクルを送る植物です。冬生一年草もあわせ,ムギほ場で問題になる雑草には次のような特徴があります。

冬生一年草 越年草ともいう。秋に発芽・出芽して,越冬後,翌年夏までに開花・結実する。冬生一年草の多くは,夏生一年草の性質をあわせ持つ。たとえば暖かい地方では冬生,寒い地方では夏生の生育パターンをとることがある(秋に発芽・出芽せず,春先に芽生えたものが夏までに開花・結実する)。
夏生一年草 春先に出芽し,収穫までの短期間で生育,開花・結実する。越冬はできない。春播き,秋播き栽培の両方で問題になる。
多年生雑草 ほ場周縁部や畦畔から,地下茎などでムギほ場内に侵入する。繁殖主体は,種子と栄養繁殖のどちらなのか,また,地下部の増殖がいつ行われているか不明な草種も多い。
風散布型の雑草 キク科が多い。通常,ほ場周縁部や畦畔に生育し,結実した種子が風で飛来,しばしばムギほ場内で生育する。季節性はやや不明確。

2.ムギ類の栽培と雑草防除の考え方

1. ムギ類の栽培期間と雑草防除の体系

ムギ類は栽培期間が比較的長く,時期ごとに雑草の種類や特性が異なるため,それらに応じた防除手段が必要になります。

図1は秋播きムギ類を例にした,雑草の出芽時期と防除手段との関係です。ムギ類の雑草防除は「播種前」,「播種後出芽前」,「生育期」に大別されます。

⑴ 播種前の防除

多くの雑草は,ムギ類の播種前(前作の収穫前後)から発芽・出芽を始めています。

前作の収穫から播種までの期間が空くと,その間に雑草の生育が進みます。それらは播種前にていねいな耕起や,非選択性除草剤を散布することでほとんどが死滅します。

この防除が不完全で生き残りがあると,ムギ類よりも大きく生育してしまうことが多いため,播種前の防除は重要です。

⑵ 播種後の防除

ムギ類を播種する際の耕起作業は,多くの雑草にとって発芽の引き金となり,土中の種子からたくさんの幼植物がいっせいに出芽してきます。

土壌処理型除草剤(土壌処理剤)は,これら幼植物の防除を目的に,ムギ類を播種した後,出芽する前に散布するものです。地表面に均一に散布することで効果を発揮し,種子から発芽・出芽する雑草の幼植物をおおよそ1ヶ月,抑制します。

土壌処理剤の効果が切れた後も雑草の出芽は続きますが,積雪のみられる地域や乾燥しやすい地域では,小さな幼植物の多くは寒さのために自然に枯死します。

⑶ 生育期の防除

土壌処理剤の効果が不十分だった場合や,冬期も雑草の出芽,生育が続く暖かい地域では,ムギ類生育期の雑草防除も必要です。寒冷な地域でも,融雪後に出芽する(春生え)雑草の防除がしばしば必要になります。春先に出芽した雑草の中には,ムギ類の収穫までの短期間で開花・結実することもあるため,これらが多発する場合には防除が必要です。

ムギ類生育期の雑草防除には,中耕・土入れと生育期処理除草剤(茎葉処理剤)があります。

⑷ 休閑期間の防除 ―輪作と雑草―

輪作などで,ムギ類の栽培が2〜3年に1回の場合もあります。この場合,ふつうはムギ類を栽培しない年の冬場に,ほ場を耕起します。この耕起作業により雑草は防除されます。このように,ムギ類を栽培した年に防除しきれずに落とされた雑草の種子も,休閑期間に大きく減少します。休閑期間が十分にある場合は,防除が不要となる場合もあります。

3.ムギ類で使われる除草剤とその特徴

⑴ 非選択性茎葉処理剤

ムギ類の生育していない時期(播種前,休閑期間),場所(ほ場周縁部)で使用します。

接触性(パラコート・ジクワット,グルホシネート)と浸透移行性(グリホサート)があります。接触性の剤は,雑草の地上部のみを枯殺する草刈代用として用いられ,浸透移行性の剤は,多年生雑草の地下部も枯殺する効果があります。

非選択性茎葉処理剤

使用時期 有効成分 HRAC 系統 特徴
播種前など,ムギ類の生育していない時期・場所 ジクワット 22 ビピリジウム系 接触性:
地上部のみ枯殺(草刈代用)
パラコート 22
グルホシネート 10 アミノ酸系
グリホサート 9 アミノ酸系 浸透移行性:
多年生雑草の地下部も枯殺

*麦類の適用,使用時期,地域,特徴などの詳細は,必ず各剤のラベルをご確認のうえ使用ください

⑵ 土壌処理剤

土壌処理剤の多くは幅広い草種に対して効果があります。土壌処理剤の有効成分には,どちらかといえば広葉雑草に効果が高い,イネ科雑草に効果の高いといったように,それぞれ特性があり,その特性の異なる複数の成分を混合した剤が一般的です。

種子が大きく,土中深くの種子から出芽できる草種や,遅い時期に出芽する草種に対しては防除効果が劣ります。

⑶ 茎葉処理剤

生育初期の雑草に対して散布するもので,おもに広葉雑草が対象です。成分によって効果の高い草種と低い草種があること,雑草のサイズ(葉齢)が大きくなると効果が低下することがあるため,ほ場での雑草の様子を確認して,ラベルに記載の範囲で最適な時期に散布する必要があります。

土壌処理剤,茎葉処理剤ともに,同じ剤を何年も続けて使用すると,その剤(有効成分)が効きにくい草種が増えてきます。また,除草剤に対して抵抗性をつけることもあります。ムギほ場での雑草の種類の変化に早めに気づき,HRACコードを参考に,成分(系統)が異なる除草剤を輪番で使うことが,雑草を蔓延させないコツになります。

土壌処理型除草剤(土壌処理剤)

使用時期 有効成分 HRAC 系統 特徴
ムギ播種後〜出芽前 ピロキサスルホン 15 イソキサゾリン系 イネ科雑草に効果が高い
ベンチオカーブ 15 チオカーバメート系
リニュロン 5 尿素系 広葉雑草に効果が高い
ムギ播種後〜生育初期 トリフルラリン 3 ジニトロアニリン系 イネ科雑草に効果が高い
ペンディメタリン 3 ジニトロアニリン系
プロメトリン 3 トリアジン系
インダノファン 15 オキシラン系
フルフェナセット 15 オキサアミド系
プロスルホカルブ 15 チオカーバメート系
ジフルフェニカン 12 ニコチンアニリド系 広葉雑草に効果が高い

茎葉兼土壌処理剤

ムギ播種後〜生育期 チフェンスルフロンメチル 2 スルホニルウレア系 広葉雑草に効果が高い

生育期処理除草剤(茎葉処理剤)

ムギ類生育期 MCPA 4 フェノキシ酸系 広葉雑草対象
アイオキシニル 6 ニトリル系
ベンタゾン 6 ダイアジン系
ピラフルフェンエチル 14 フェニルピラゾール系

*麦類の適用,使用時期,地域,特徴などの詳細は,必ず各剤のラベルをご確認のうえ使用ください

(「バイエル 早わかり麦の雑草図鑑」を元に編集・加工作成)